第7章: ファイルの入出力とコンテキストマネージャ

この章では、テキストファイルやJSON、CSVファイルの読み書きといった、実践的なファイル操作を学びます。特に、リソース管理を安全かつ簡潔に行うための with 文(コンテキストマネージャ)は、Pythonプログラミングにおいて必須の知識です。

`open()`関数によるファイルのオープン

Pythonでファイルを操作するには、まず組み込み関数の open() を使ってファイルオブジェクトを取得します。open() は少なくとも2つの引数、ファイルパスとモードを取ります。

  • ファイルパス: 操作したいファイルへのパス(例: 'data.txt')。
  • モード: ファイルをどのように開くかを指定する文字列。
    • 'r': 読み込み専用(デフォルト)
    • 'w': 書き込み専用(ファイルが存在すれば上書き)
    • 'a': 追記(ファイルの末尾に書き足す)
    • 'x': 新規作成して書き込み(ファイルが存在するとエラー)
    • '+' を付けると読み書き両用になります(例: 'r+', 'w+')。
    • 'b' を付けるとバイナリモードになります(例: 'rb', 'wb')。

encoding='utf-8' は、特に日本語のような非ASCII文字を扱う際に重要です。文字化けを防ぐため、テキストファイルを扱う際はエンコーディングを明示的に指定することを強く推奨します。ファイルを閉じる close() メソッドを呼び出すまで、ファイルリソースはプログラムによって確保されたままになります。

テキストファイルの読み書き

ファイルオブジェクトのメソッドを使って、ファイルの内容を操作します。

書き込み

write() メソッドは、文字列をファイルに書き込みます。このメソッドは書き込んだ文字数を返します。

write() は自動的には改行しないため、必要であれば自分で改行コード \n を追加します。

test.txt(編集不可)

読み込み

ファイルからデータを読み込むには、いくつかの方法があります。

  • read(): ファイルの内容全体を一つの文字列として読み込みます。
  • readline(): ファイルから1行だけを読み込み、文字列として返します。
  • readlines(): ファイルのすべての行を読み込み、各行を要素とするリストで返します。

`with`文による安全なファイル操作(コンテキストマネージャ)

ファイルを open() したら close() する必要がありますが、処理中に例外が発生すると close() が呼ばれない可能性があります。これを確実に、そして簡潔に書く方法が with 文です。

with 文のブロックを抜けると、ファイルオブジェクトは自動的に close() されます。エラーが発生した場合でも同様です。これは「コンテキストマネージャ」という仕組みによって実現されており、ファイル操作の標準的な方法です。

このように、with 文を使えば close() の呼び出しを忘れる心配がなく、コードもすっきりします。今後は常に with 文を使ってファイルを扱うようにしましょう。

spam.txt(編集不可)

`json`モジュールを使ったJSONの操作

JSON (JavaScript Object Notation) は、データ交換フォーマットとして広く使われています。Pythonの標準ライブラリである json モジュールを使うと、Pythonのオブジェクト(辞書やリストなど)をJSON形式のデータに、またはその逆に変換できます。

  • json.dump(obj, fp): Pythonオブジェクト obj をJSON形式でファイルオブジェクト fp に書き込みます。
  • json.load(fp): JSON形式のファイルオブジェクト fp からデータを読み込み、Pythonオブジェクトに変換します。
<!-- end list -->

json.dump()indent=4 は、人間が読みやすいように4スペースのインデントを付けて出力するオプションです。ensure_ascii=False は、日本語などの非ASCII文字をそのままの文字で出力するために指定します。

user.json(編集不可)

`csv`モジュールを使ったCSVの操作

CSV (Comma-Separated Values) は、スプレッドシートやデータベースでよく使われる表形式のデータを保存するためのフォーマットです。csv モジュールを使うと、CSVファイルの読み書きが簡単になります。

CSVファイルへの書き込み

csv.writer() を使ってライターオブジェクトを作成し、writerow() (1行) や writerows() (複数行) メソッドでデータを書き込みます。

scores.csv(編集不可)

CSVファイルの読み込み

csv.reader() を使ってリーダーオブジェクトを作成します。このオブジェクトをループで回すことで、1行ずつリストとしてデータを取得できます。

注意点として、csvモジュールはすべてのデータを文字列として読み込みます。数値として扱いたい場合は、自分で int()float() を使って型変換する必要があります。

この章のまとめ

この章では、Pythonを使った基本的なファイルの入出力について学びました。

  • open() 関数: ファイルを開き、ファイルオブジェクトを取得するための基本です。モード ('r', 'w', 'a') とエンコーディング ('utf-8') の指定が重要です。
  • ファイルメソッド: .read(), .readline(), .write() といったメソッドを使って、ファイルの内容を操作します。
  • with: ファイルを自動的に閉じるための最も安全で推奨される方法です。コンテキストマネージャの仕組みにより、後片付けが確実に行われます。
  • json モジュール: Pythonの辞書やリストを、広く使われているデータ形式であるJSONとして読み書きするために使用します。json.dump()json.load() が中心的な関数です。
  • csv モジュール: カンマ区切りの表形式データを扱うためのモジュールです。csv.writer()csv.reader() を使って、行単位での読み書きを簡単に行えます。

ファイル操作は、プログラムの設定を保存したり、処理結果を記録したり、他のシステムとデータをやり取りしたりするなど、あらゆるアプリケーションで必要となる基本的なスキルです。

練習問題1: ユーザー情報の書き出しと読み込み

  1. 以下の情報を持つユーザーのデータを、Pythonの辞書として作成してください。
    • id: 101
    • name: "Sato Kenji"
    • email: "kenji.sato@example.com"
  2. この辞書を、with 文と json モジュールを使って user_profile.json という名前のファイルに書き出してください。その際、人間が読みやすいようにインデントを付けてください。
  3. 書き出した user_profile.json ファイルを読み込み、内容をコンソールに表示してください。
practice7_1.py
python practice7_1.py
user_profile.json(編集不可)

練習問題2: 売上データのCSV集計

あなたは店舗の売上データ(CSV形式)を処理する必要があります。以下の手順でプログラムを作成してください。

  1. sales.csv ファイルを読み込みモードで開きます。
  2. csv.reader を使ってデータを1行ずつ読み込み、ヘッダー行(1行目)は無視してください。
  3. 各商品の「価格」と「数量」を掛け合わせ、その行の売上金額を計算します。
  4. すべての商品の合計売上金額を計算し、最後に「合計売上: XXXX円」という形式でコンソールに出力してください。

ヒント: csv モジュールで読み込んだ値はすべて文字列型です。計算する前に int() を使って整数型に変換する必要があります。

sales.csv(編集不可)
practice7_2.py
python practice7_2.py